MAGAZINE INDEX
出張で宿泊したホテルや、日々の拘りなど徒然に。
№23
30 St Mary Axe セント・メリー・アクス
The Gherkin City of London UK
英国の首都ロンドンの金融街シティに建つ21世紀のランドマーク
ロンドンの金融街シティにあるホテルへのチェックインを済ませ、リモワ・トパーズを部屋の床に全開にする。ここ数年愛用のスーツケース。
日本から持参したガーメントをようやくクローゼットに収め、ウェルカムティーを飲みながらほっと一息。
時計に目をやると午後7時を少し回ったところ。
5月のロンドンの午後7時はまだ真昼のように明るい。
今はサマータイム期間中なので日本との時差は8時間。
身体は夜中の3時と理解っているようで、少し浮遊感がある。
ビショップスゲート通りをバンク方向へ歩き始める。
初めは他の建物に隠れて見えないが、5分ほど歩くとそれは突然目の前に現れる。
30セント・メリー・アクス 30 St Mary Axe、通称ガーキン The Gherkin(ピクルス用のキュウリ)と呼ばれている
The Gherkin 高さ約180メートル、40階建
スイス・リ本社ビル The Swiss Re Headquarters
香港上海銀行香港本店ビルで名を馳せたノーマン・フォスター卿らによる設計で、2004年に竣工。英国の首都ロンドンの金融街シティに建つオフィスビル。同年、英国王立建築家協会が贈るスターリング賞を初の審査員全員一致で受賞。反面、2006年にはBBCロンドンの視聴者によるロンドンでもっとも醜い建物のひとつにも選ばれている。大きな反響を巻き起した。翌年6億ポンドで売却。ビルの完成から3年余りで2倍以上に跳ね上がった同ビルの不動産価格。オーナーは相当額のキャピタルゲインを得たと思われる。
当初の建設案による高さ370メートルに及ぶビルの外観がピクルス用のキュウリに似ていたことから、イギリスの新聞ガーディアン紙の編集者により揶揄されて「ガーキン」と呼ばれるようになった。ピクルス用のキュウリの名前など知らないほとんどの日本人には、コクーン(繭)ビルといったほうが通じるかもしれない
ガーキンをめぐる景観論争は今も絶えないようだが、他国では800メートルを超える超高層ビルが竣工している。180メートルという控えめな高さと、上の階に行くほど細くなる丸っこい形状は威圧的過ぎず、ビル風の低減にも役立っている。また、螺旋状の吹き抜けが外観のデザインのアクセントにも、ビル全体の換気を促して省エネにも貢献している。結果、ユニークな形状が地球環境に優しい、エネルギー効率の高い建物を下支えしている。
ガーキンをはじめとするコンテンポラリーな建物とタワーブリッジに代表されるゴシック様式の歴史的建造物が混在する景観こそロンドンの魅力。2012年夏季五輪ロンドン大会に向けて、至る所で無数のタワークレーンがロンドンの空に切り立っていた。変わる ロンドンのスカイライン。次回はどんな表情を見せるのか。
ガーキンの地上階にあるバーには、サマータイムのアフター5をエンジョイするシティのビジネスマン&ウーマンらであふれていた。屋外でにぎやかにパイントグラスを傾ける彼らのいつもの光景を見ると、ロンドンに来たことを実感する。
今回宿泊したホテルの部屋には舷窓のような丸窓がある。その窓からはシティの金融関連のビルと一緒にガーキンも望むことができる。
ウィークデーは世界中どこかの国の市場が開いているので、多くのオフィスの照明は真夜中も消えることがない。丸窓を通して見ると何とも幻想的。そんな風景を眺めながら、ベッドに体を横たえるとすぐに眠りについた。渡英の数日前に観たティム・バートン監督の映画『アリス・イン・ワンダーランド』の影響か、はたまたジェットラグの影響か、その日のガーキンはワンダーランドに迷い込んだアリスが目にしたあの巨大なキノコに見えた。
今回宿泊したホテルとガーキンビューの部屋の詳細は、また別の機会に。
2010年5月撮影